賃貸での原状回復は、その費用負担の範囲や程度などで度々トラブルが発生しています。トラブルにならないに越したことはありませんが、もしもトラブルになった場合、最終的にどのような判断となるか不安に感じている人も多いのではないでしょうか。ここでは、実際にトラブルとなった事例と結果についてご紹介します。
無断でペットを飼育、40万円の費用負担となった例
マンションの賃貸契約に反して、無断で犬を飼育していた借主に対し、フローリングの損傷が著しいとして、フローリングの全面貼り替え費用40万円の請求が裁判で認められました。
フローリングには、犬の爪跡の傷の他にも糞尿の匂いなどもあり、また契約上ペットの飼育はできないことになっていたことから、借主の故意・過失にあたるまたは通常の使用を超える損耗・毀損とされた例です。(H27.1 東京地裁)
自然損耗等を借主の原状回復義務とすることが無効となった例
借主が退去する際に、契約時の契約内容に基づいて自然損耗等についても借主側が原状回復義務を負うことに合意しているとした貸主側でしたが、判決では消費者契約法10条に該当し「無効」だという主張が認められました。
賃貸借契約書の中の文面に、借主が自然損耗も了承したと解釈できるような内容が明記されていたと貸主は主張しましたが、本来は将来的な劣化の修繕費も含まれているとされる通常の賃料を受け取りながらも、賃貸期間中の自然損耗まで原状回復費用を負担させることは、二重の負担を強いることになると判断され、「無効」とされたのです。(H17.11 東京簡裁)
クリーニング費用を賃貸人の負担とした例
賃貸借契約書の書面に中に、退去時のクリーニング費用(原状回復費用)を賃借人が負担するという明確な記載がなく、賃借人は負担しなくともよいという裁判が認められました。
通常の使用範囲内での損耗以外に関して、賃借人にその費用を負担させるためには、賃借人に明確に伝え、さらに賃借人自身が原状回復に関して義務を認識し、負担への意思表示をしていることが条件となっています。しかし、こののケースでは明確な記載もなく、賃借人が負担への意思表示もしていないことなどから、賃借人への負担は「無効」とされました。(H12.3 仙台簡裁)
原状回復のトラブル事例をご紹介します。
原状回復は、些細なことからでもトラブルに発展することもあります。それほど重要視しない契約書の内容ですが、後々でのトラブルを防ぐためにも入居時での確認はとても重要です。退去時のことについてはしっかりと確認しておきましょう。